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巨匠・五社英雄と宮尾登美子の愛した陽暉楼





得月楼
西海一と謳われた大妓楼・得月楼に女一人で行ってみた
京都駅から自家用車を走らせること4時間、雨の高知県は得月楼に到着したのは3月の末であった。
私が得月楼を知ったのは、直木賞作家の宮尾登美子の作品であったか、あるいは五社英雄により映画化された『陽暉楼』や『寒椿』であったかは定かではない。 ともかくも、得月楼とは西海(中国・四国・九州地方の総称)一の遊郭と謳われた大妓楼で華やかに装った芸者・舞妓が妍を競った場所なのである。小説などではもっぱら旧称の陽暉楼として登場する。
女性にとって、妓楼とは一つの秘境である。例外はそこで働く女性だけだ。 私は勇気を振り絞って、秘境に足を踏み入れた。
往事は一つの町ほどの大きさがあったといわれる大妓楼も、今はビルの間に静かにたたずんでいる。しかし、門をくぐると圧倒された。敷石が畳一枚分ほどの巨石なのである。ヒールの音を響かせて入り口に向かうと、着物姿の2人が静かに立っていた。 「雨の中大変だったでしょう」 本場の高知弁を聴くのは初めてだ。 「靴はそのままにしといてください、さ、お座敷へ」 亭主と思われる男性が私の靴を手にしていった。 ああ、ちゃんとした靴を履いてきてよかった。 座敷の中に通される。
女性一人できた私への気遣いであろう、仲居さんが終始話し相手になってくれた。 皿鉢という大皿料理とお酒が名物であるが、下戸で女一人なのだからしようがない。 予約していた懐石料理に、ジュースを頼んだ。 懐石料理を食べた経験はそう多くないが、味・趣向ともにとびぬけていたと思う。 仲居さんに得月楼を訪ねた経緯を伝えると、 「お若いのによくご存じですね」 ととても喜んでくれた。
食後は料亭内を案内して貰えた。 「もう梅の季節は終わってしまいましたが」 そういわれてみた盆栽の直径は、軽く1.5メートルはあった。 金箔の貼られたふすまに、お風呂の様に大きい火鉢、高知で初めて車を買ったのは得月楼であったなど、豪華な話は尽きない。 芸者たちの写真もあった、女優顔負けの美人ぞろいである。 まさに物言う花というべき美女たちに囲まれ、訪れたお客たちは天界に上った気持ではなかっただろうか。
店から出た時、雨はやんでいたのでホテルへは歩いて帰った。 なんだか異世界から戻ってきた気分だ。 日記をつけるために得月楼閣の公式HPやSNSをチェックする。
現在は名士の集まりだけではなく、結婚式会場やお食い初めの場所としても利用されているようだ。 かつての妓楼は、現在は高級料亭、あるいは社交場として完全に開かれた場所になったのだ。
ただ一つ、「コンパニオン派遣可能」の文字に、一抹の寂寥感を感じた。
旅程
日次 | 日程 |
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1日目 |
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2日目 |
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得月楼
予算 | 25000円~(1名1室料金) |
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所在地 | 高知県高知市農人町5-29 |
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